第3 説得を目的とする書面であること
1 目的は説得
説得力という観点から,よしあしの基準が生じる。
よい起案は,世間一般に言われる「わかりやすい文章」と通じるのではないか(私見)。
なお,説得の目的は,訴訟物が存在するor存在しない(後述)。
2 説得相手は裁判官
(1)説得の相手は,民事裁判官。
→ 民事裁判官が重視しているものを重視して,説得する。
(2)大前提(法・規範)のレベル
裁判官は,条文・判例・通説を重視する。
→① 条文・判例・通説を重視して記載する。
② 条文の文言や判例に反する見解をとる場合は,理由を説明。
民事裁判官が事実認定上重視する事実は,ある程度類型的。
→ 民事事実認定の知識・考え方を活用する。
3 相手方代理人の存在
(1)最終準備書面は,反対の結論に向けて論証をする相手方訴訟代理人の存在を前提とする。
(2)したがって,第一に,自分の結論とその根拠を論証するだけでなく,相手方の結論及び根拠への弾劾も必要になる。
(3)また,第二に,相手方がこだわっていないところは,そんなに熱心に論証しなくてよい。
4 誰の立場で説得するか
(1)一方当事者の立場
最終準備書面は,一方当事者の立場から論じるもの。
裁判所の判決のようなことを書かない。
また,自分の根拠を勝手に弾劾しない。
(2)登場人物たる弁護士(甲野太郎・乙野花子など)になりきる
最終準備書面「起案」は,原告訴訟代理人弁護士or被告訴訟代理人弁護士として,記載することを求められている。
そこで,起案者は,その記録の登場人物である弁護士になりきればよい。
記録の中で,甲野太郎さんや乙野花子さんは,主張書面を陳述したり,訴訟を提出したり,尋問事項を考えたり,尋問したり,いろいろな訴訟活動をしている。甲野太郎さんや乙野花子さんが,いったい何を考えてそんなことをしていたのか,その意を汲んで,そのストーリーに沿って,説得活動を行うとよい。
5 「最終準備書面」起案の読み手は,民弁教官
「最終準備書面」起案の読み手は,民弁教官。